ラン後のアキレス痛を整える
2025年10月11日
ラン後のアキレス痛を整える
ラン後や階段でアキレス腱がズキッとする——代表的な原因はアキレス腱炎(腱障害)です。似た症状のケイガーズ脂肪体(Kager’s fat pad)や踵骨後方滑液包炎との違い、今日からの対処、通院の流れを横須賀市の当院がやさしく解説します。まずは基礎情報ページアキレス腱炎もチェック。
公開・更新:2025-10-11
まず要点
症状と起こるしくみ(鑑別含む)
アキレス腱炎(腱障害)は、ふくらはぎ筋(腓腹筋・ヒラメ筋)と踵骨を繋ぐ腱に微小損傷と過敏化が生じ、反復の牽引・圧縮で痛みます。着地衝撃の増加、フォームや靴の不適合、急な走行距離・坂道・スピード練習の増加が要因です。
- 部位別の特徴:
- 中枢部(ミッドポーション):踵から2〜6cm上。走後や翌朝にズキッと痛い、押すと腫れたロープ状の硬さ。
- 付着部(インサーション):踵骨付着直上。階段や背伸びで痛い。後方の靴当たりでも悪化。
- 鑑別1:ケイガーズ脂肪体(Kager’s fat pad):踵骨前方の脂肪体が炎症・挟み込みで痛む。踵骨前上方〜アキレス腱前面の圧痛、足首の強い底背屈で挟まれて痛みが出やすい。
- 鑑別2:踵骨後方滑液包炎:かかと奥の袋の炎症。靴のヒールカップ圧迫で増悪、付着部腱炎と重なることも。
- 他の鑑別:アキレス腱部分断裂(急なバチン音・踏み抜き感)、踵骨疲労骨折、シーバー病(成長期)、後脛骨筋腱障害など。
見極めポイント(受診目安)
- セルフチェック:つま先立ちや階段昇降で痛む/朝のこわばりが強い/腱をつまむと局所的に痛い。
- ケイガーズ脂肪体が疑わしい:足首深く曲げ伸ばしで踵骨前方が挟まれて痛い、柔らかい靴で軽減。
- 滑液包炎が疑わしい:硬いヒールカップやバックカウンターで悪化、かかとの奥深くがズキズキ。
- 医療機関へ:バチン音・急な陥凹・つま先立ち不能、強い腫脹・発熱、夜間痛が続く、成長期の強い痛み。
- 評価・画像:必要に応じX線(骨棘・骨折)、超音波(腱肥厚・血流)、MRI(脂肪体/滑液包/付着部の評価)。
今日からの対処
- 負荷コントロール:ラン量を一時30〜50%減、坂・スプリント・硬路面は回避。痛みが0〜3/10で収まる範囲に調整。
- フットウェア:ヒールカップがやや硬く、かかとが安定する靴へ。付着部痛や滑液包炎傾向はかかと当たりが少ない靴に変更し、必要時はインソールで荷重線を整える。
- 腱エクササイズ(週5〜7日):
- 等尺性カーフプレス:壁に手、つま先立ち手前で5秒×10回×2セット。
- ヒールレイズ(中立〜軽底屈):痛み0〜3/10でゆっくり上下10回×3。付着部痛は端立ちNG(踵を落とし過ぎない)。
- 段階的エキセントリック:ミッドポーションは片脚下降(戻りは両脚)10回×3、週5日。痛みが収まれば荷重を微増。
- ケイガーズ脂肪体・滑液包の配慮:深いしゃがみ込み・強い足関節背屈で挟まる痛みは一時回避。踵の当たりはパッドで保護。
- セルフケア:ラン後はふくらはぎのストレッチ(膝伸ばし/曲げ各20〜30秒×3)、就寝前の軽い温めでこわばり軽減。
- 再開の目安:平地ウォーク30分で増悪なし→ジョグ&ウォーク→連続ジョグへ。週ごとに距離10〜20%増。
当院の施術
トムソンテーブル施術
骨盤・股関節・足部の連動をやさしく整え、アキレス腱への牽引と踵周囲の圧縮ストレスを減らします。痛みを誘発する矯正は行いません。
ハイボルテージ施術
急性〜亜急性期の疼痛緩和を短期的に補助。禁忌に配慮し、トレーニングと併用して走行復帰を後押しします。詳細はこちら。
鍼灸
腓腹筋・ヒラメ筋の過緊張を調整し、腱の負担を間接的に軽減。体調・既往に応じて刺激量を細かく調整します。詳しくは鍼灸施術へ。
ふくらはぎの肉離れが疑わしい場合はふくらはぎの肉離れも参照ください。
横須賀市(北久里浜・衣笠)での通院案内はアクセス・料金をご確認ください。
関連ページ
患者さまの体験談
坂練後の付着部痛が軽減
40代・男性・市民ランナー・6週間
- 状況:坂ダッシュ増量後に踵直上がズキッ。ヒールカップで悪化。
- 行ったこと:靴を変更し踵当たりを回避、等尺→中立域ヒールレイズ、走行量50%に調整、必要時にハイボルテージ。
- 経過:2週で日常痛が半減、6週でジョグ10km連続でも増悪なし。段階的にスピード練再開。
ケイガーズ脂肪体の挟まれ痛が落ち着く
30代・女性・保育士・5週間
- 状況:深いしゃがみ込みで踵前方がズキン。朝のこわばりも。
- 行ったこと:深屈曲を回避、踵パッドで保護、ふくらはぎの等尺・軽いヒールレイズ、インソールで荷重線調整。
- 経過:3週で階段痛が軽快、5週でジョグ再開。就業後の張りも許容内に。
※掲載はご本人同意のもと匿名化。赤旗症状は医療機関へ。
よくある質問
完全安静のほうが早く治りますか?
いいえ。腱は適量の負荷で強くなります。痛み0〜3/10の範囲で等尺→ヒールレイズへ段階的に進めるのが一般的です。
付着部痛でかかとを落とす運動は?
踵を深く落とす動きは悪化要因になり得ます。中間位〜軽い底屈域で行い、痛みが収まってから可動域を拡げましょう。
再発を防ぐコツは?
週当たりの走行距離・強度は10〜20%以内で増量、坂・スプリントは段階導入。靴の摩耗は早めに交換し、インソールで安定化を図ります。
参考・出典(一次情報)
- JOSPT Clinical Practice Guideline 2018: Achilles Pain, Stiffness, and Muscle Power Deficits
- BJSM: Alfredson eccentric protocol and tendinopathy
- AAOS OrthoInfo: Achilles Tendon Problems
- Radiopaedia: Kager’s fat pad
- Orthobullets: Retrocalcaneal Bursitis
※適応は評価のうえ判断します。強い腫れ・変形・断裂疑いは医療機関へ。















