上腕二頭筋腱損傷|投球・筋トレ復帰目安

2025年10月28日

上腕二頭筋腱損傷|投球・筋トレ復帰目安

肩の前側〜上腕の痛みや力の入りにくさは上腕二頭筋腱(特に長頭腱)の炎症・部分断裂が背景にあることがあります。
本稿では受診の目安今日からの対処投球・筋トレの復帰基準をコンパクトに整理します。

公開・更新:2025-11-01

まず要点(3行まとめ)

  • 痛みは0~2/10・24時間以内の悪化なしを復帰の共通合図に。
  • 投球は距離→球数→強度の順で微増。筋トレはアイソメ→可動域→負荷の順で。
  • 急な変形(ポパイサイン)や著明な力の低下は整形外科へ早めの相談を。

どんなケガ?(長頭腱と遠位腱の違い)

上腕二頭筋は「長頭腱(肩の前・結節間溝を走行)」と「短頭腱」、そして肘に付く遠位腱(橈骨粗面)があります。
投球・オーバーヘッド動作では長頭腱が炎症~部分断裂に至ることが多く、肘側の急な断裂は回外・屈曲の著明な筋力低下を伴うため早期の医科判断が必要です。

受診の目安(赤旗)

  • 受傷直後のブチッという音・急な変形(いわゆるポパイサイン)。
  • 青あざが急速に広がる、安静でも強い痛みが続く。
  • 肘の回外(スープを注ぐ動き)・屈曲が著しく弱い。
  • 夜間痛や安静時痛が強く増える、しびれ・脱力を伴う。

今日からの対処

  • 痛みの範囲での微小可動:肘の屈伸・前腕回内外を軽く。反動は使わない。
  • 姿勢と肩甲帯:胸を軽く開く・肩甲骨を下制し首肩の力みを減らす(猫背矯正プログラム参照)。
  • 炎症強い時期:温めすぎや深いストレッチは避け、短時間の局所冷却を間欠的に。
  • 補助施術:痛みの強い初期は短期鎮痛の補助として ハイボルテージ施術を併用する場合があります。

復帰の客観指標(共通)

  • 痛みが0~2/10、終了直後は0~3/10以内、翌日(24時間)に悪化しない
  • 肩・肘の可動域が左右差90~95%以上
  • 握力・肘屈曲・前腕回外の筋力が左右比90%以上または競技前の自己基準に近い。
  • 圧痛が限局し、日常生活での不意の動作で痛みが強く出ない。

投球復帰ステップ(目安)

※各ステップは2日以上空け、2回連続で良好なら次段階へ。途中で痛みが3/10を超える・翌日悪化する場合は一段階戻します。

  1. シャドー→ネット前キャッチ:10~15分、フォーム確認(リリースは軽く)。
  2. 近距離スロー(15~20m):20~30投×1セット。リリース角・体幹の同調を意識。
  3. 中距離(25~30m):30~40投。球数を増やすよりフォームの再現性を優先。
  4. 遠投・力感の微増(35~45m):30~40投。力感は最大の7/10以下
  5. ラインドライブ~ブルペン軽強度:セットポジションから20~30球。
  6. 実戦強度の分割復帰:イニング想定で球数・間隔を管理し段階的に。

肩峰下狭窄や腱板の影響が疑われる場合は、肩インピンジメントの管理も併せて実施します。

筋トレ復帰ステップ(目安)

  1. アイソメトリック:肘屈曲・回外を痛み0~2/10で5~10秒×5回、1~2日おき。
  2. ゴムバンド:ローイング、肩外旋、肩甲骨下制。RPE 4~6、テンポゆっくり。
  3. 押す系の自重:膝つきプッシュアップ→通常プッシュアップ。
  4. マシン・ダンベルの軽負荷:ラットプル・シーテッドロウ中心。ネイトラルグリップ推奨。
  5. カール種目:EZバー/ハンマーカールから再開(回外ストレスを抑える)。RPE 6以下、反動なし。
  6. 上限負荷の再設定:週あたり負荷増は+10%以内。翌日悪化があれば前段階へ。

避けたいフォーム(初期~中期)

  • プリーチャーカールでの深い伸長位反復。
  • グリップを強く捻り込む強回外+高重量
  • 高挙上位(ABER)での反動を伴うプレス系。

悪化を招きやすいNG

  • 「その場は投げられた」直後の球速テスト・高強度連発。
  • 24時間ルール無視(翌日の痛み・腫れを確認せず進める)。
  • 肩甲帯の介入なしに上腕二頭筋だけを追い込むメニュー。

よくある質問

いつ投球を再開できますか?

痛み0~2/10、可動域と筋力が左右比90%以上、翌日に悪化がないことを満たしたら15~20m・20~30球から。2回良好で次の距離へ。

二頭筋のトレーニングは何から?

アイソメ→ハンマーカール(中立)→EZバー。プリーチャーや強回外は後期から。RPE 6以下で翌日悪化がなければ10%以内で漸増。

断裂していたらどうなりますか?

変形や著明な力の低下がある場合は整形外科で画像評価・手術適応の検討が必要です。疑う所見があれば早めに受診しましょう。

参考・出典(一次情報)

  1. AAOS OrthoInfo:Biceps Tendon Tear at the Shoulder
  2. AOSSM:Return to Throwing Program
  3. PM&R KnowledgeNow:Proximal Biceps Tendon Disorders
  4. BJSM:PEACE & LOVE: Soft-tissue injury management

※競技レベル・重症度で時期は前後します。最終判断は対面評価に基づきます。

この記事の執筆者

堀江 茂樹(鍼灸整骨院ひまわり 代表施術者)

  • 柔道整復師(機能訓練指導員認定)/はり師・きゅう師
  • 柔道整復師臨床実習指導者
  • あん摩マッサージ師・はり師・きゅう師臨床実習指導者
  • JSBM会員

最終更新日:2025-11-01

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